読書の記録

No.196 2006.11.16

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処方箋 /清水博子

(集英社 /2001年発行)


 すばる文学賞でデビューした作者。これは第125回芥川賞候補になって、落ちた作品。あれ、じゃあ誰が受かったんだっけと思って調べたら玄侑宗久さんだった。…全然知らないんですけども。

 ぺらぺらと話家が読み上げる口上のような感じの文章。安部公房風味かも。文章はかっちりと純文学してていいんだけど、話や人物が全然面白くなかった。登場人物が理解できないし、しかも魅力がないどころかむしろ不快感を与える。話に脈絡がないし、設定はやりっぱなしのまま終わってしまう。わざとなのか天然なのか、それとも常人とは感覚が違うのか。何を楽しめばいいのかよく分からなかった。わたしが最後まで読めたということは、まあ技術的には達者だったのだろうけど。

 主人公は、海外出張をする友人に、姉が病院に行くのを付き添うというバイトを頼まれる。この姉は滅多に喋らず、「おねえさん」と呼ばないといけない。栄養補助飲料しか食べず、日がな本を読んで暮らしている。容姿は『(引用)前方ににゅっと突き出た額の真ン中で湯あがりの湿気を吸ったぶあつい髪が分けられ、梳ったあとのない毛先が肩口でそりかえり、横にすれば水を溜められそうなほど陥没したこめかみから受け口気味の顎の線が伸びている。』とういもので、しかも出かけるときも黄色いナップサックを背負うという格好。なんだこりゃ。どんな妖怪だよ。てっきり精神的な病の薬をもらいに行っていると思いこんでいた主人公は、実はそれがただの便秘薬だと知って複雑な気分になる。主人公の彼女はおねえさんという得体の知れない存在に嫉妬するが、次第に自分から積極的におねえさんに関わるようになり、そしてなぜか精神的な病を発症してしまう。

 最初から最後まで気持悪い話。つげ義春や水木しげるの描く漫画のように気持悪さがすーっと体を抜けて快感をもたらしてくれるような類ではなく、ただ気持悪く、最後まで読んでもどこにも発散できず、溜まる。なんだこりゃ。読んで損したという感じ。

 それとも、わたしには分からない文学がここに篭められているんだろうか。




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