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柔らかな頬 /桐野夏生 (講談社 /1999年発行) よくこんな題材で最後まで書ききるなあと感心しました。桐野さんのどんなことからも目を逸らさずまっすぐに受け止め立ち向かうという長所がよく出ていた作品。 不倫中のカスミを罰するかのように突如消えてしまった五歳の長女。事件に巻き込まれ、既に殺されたものと誰もが諦めている中、カスミは次女と夫を捨てて、長女を探しに行く。 不倫や子供が消えたというのは当人にとっては一大事だが、世間一般のニュースとしてはありふれた内容だ。だから世間の人は、ああまたかと思いながら、ときには責任のない気紛れな同情を寄せ、そして忘れていく。だがそれがもし自分だったらどうなるか。それを描いてみせたのがこの作品だと思う。当事者の視点で、しかも美化することも突き離すこともなく、淡々と描いていく。読んでいて気持がいい題材ではない。でもこれが現実なんだという説得力があって、目が離せない。 「OUT」や「リアルワールド」に比べて、センセーショナルな事件性は皆無。でもその分、より、自分とは関係のない人間の話ではなく、もしかしたら自分かもしれない人間の話として読めた気がする。うーん、でも直木賞は「OUT」のときにあげるべきだったよなーと思いました。 最後のいなくなった長女視点の話は、安っぽくてちょっと不満。もうすぐ死期を迎える末期癌の元刑事の描写はすごくよかった。自分もこんなふうに死期が近づいたら何をしよう、と思いを馳せることが出来た。 |