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アビシニアン /古川日出男 (幻冬社 /2000年発行) ★、10個出しちゃいました。 古川日出男という名はあちこちで見かけるし、評判がよさそうなことが書いてある。よい評判を聞くと、なぜかわたしの中の天邪鬼スイッチが作動して、数年ほど読まなくなるんだな。そしてほとぼりが冷めた頃に、そーっと密かに手に取るのです。ええ、ブームなんかに乗ってませんよ? みたいなポーズで。で、面白かったー!って騒いでも何を今さらという目で見られるんだけどもさ。 翻訳文のようなきっちりとした、それでいて軽やかに飛躍する、壮大な詩のような強い言葉。五感を刺激する強い情景。見たことのない世界。少しセンチメンタルなストーリー。こんな要素が揃った本に、すごく共感してしまうようです。今までにこの種の衝撃を覚えたのは、ボリス=ヴィアンの「日々の泡」とミラン=クンデラの「存在の耐えられない軽さ」。あと村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」です。まあ、好き嫌いがはっきりするタイプの本だと思うけど。わたしはめちゃ好きですよ、これ。 どうしてこう400枚も緊張感が持たせられるのかね。出てきたイメージや言葉をどうしてこう消化できるのかね。無駄な言葉がないよ。一文一文、ずきずきする。ゆっくりと読んだ。小説でしかできないことをやっていた。 ああうう!くやしい。と言うのも恐れ多いんだけども。 今までの生活から飛び出して、野生として生きていくことを決めた少女。少女は、かつて親に捨てられた飼い猫、アビシニアンと再会し、アビシニアンと共に森の中でひっそりと力強く生きていく。再生した彼女は文字を失う。文字という枠に言葉を閉じ込める必要がなくなったからだ。世界は変わる。有機的に、もっと感覚的に。
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