猛スピードで母は /長嶋有
(文藝春秋 /2002年発行)
2001年文学界新人賞受賞した「サイドカーに犬」と、その次作、芥川賞を受賞した「猛スピードで母は」の二作収録。
この作者が文学界新人賞でデビューしたとき、わたし雑誌で見てるんだよな。でも、同時受賞した「クチュクチュバーン」という訳分からん吉村萬一さんの作品の方が面白くて、こっちはバランス取るために受賞したのねくらいにしか思わず、読み流してた。
というわけで読みました。「サイドカーに犬」
やだなあ。一番嫌いなタイプの小説です。体裁だけ小説らしく文学らしく整えて、肝心の「命」が入ってない。この苛立ちはうまく伝えることができないな。読んだ人で、さらにそういうのが感じ取れる人にしか伝わらなくて、そうじゃない人から見たら、わたしが難くせつけてるようにしか見えないでしょ。理屈じゃないの。これは文学じゃないって、囁くのよ、わたしのゴーストがね。
小学生の頃の父と母が離婚に至る修羅場の思い出を現在の私がひさびさの弟に会いにいく途中で回想するという。また何ともべたな。んでもって魅力的な愛人との心の交流がありーの。あれー、なんかー、どこかで見た感じー。一番許せないのは、現在の私が徹頭徹尾語り手であって、ただの傍観者であること。小学生のままであること。なんだこの!この!小説は!!現在の私という登場人物を便利な語り手として使うんじゃねえ!回想するなら回想の意義があるだろう!そうでないなら小学生になって書け!きれいにまとめんな!てかそもそも主人公の私が男か女か分からんかったじゃないか!いわゆる小学生の女の子はこんな感じでしょ?感が表れてて小賢しい。てかもうあちこち小賢しい。すんごい虐めてやりたくなる小説です。改行多すぎ!「私」が空っぽなんだよね。現在も昔も。
はあ、もう一個収録されてるのは芥川賞受賞作。はあ。化けたのかな。このままで受賞したならやりきれないなあ…と思いつつ「猛スピードで母は」を読む。
わ!こっちは面白い!ちゃんと小説になってる!命が入ってる! またしても子供時代の母の思い出ものなんだけども、今度は回想ではなく、小学生になって書いてるからね。ほら、わたしの言ったとおりじゃん!回想じゃなくて小学生になって書いたら面白くなったじゃん!
女手一つで育てた母が恋愛したりする生き様を小学生の息子視点で書いてるんだけど。ストーリーはどうってことないけど。本当に猛スピードで母はという感じだし。母がすごく魅力的。そして息子もちゃんと生身の人間で成長するところがいいね。ああよかった。一作目で投げなくてよかった。いや、もしかして、一作目でがっかりさせといて、ギャップを楽しめという作戦?
前回レビューした「ラジオデイズ」もそうだけど、こうして見ると新人の作品ってのはまだまだ未熟で、デビューしてから変わるんだね。編集者さんのおかげなのかね。まあまだまだ未熟とか偉そうなことを言ってるわたしは、そこにも届いていないんですけど。というわけで、みなさんは新人賞の作品なんて読まなくていいと思います。そんなの読むのは、編集者と選考委員の作家と投稿者くらいでいいんじゃないかと。読者さんは、第二作目からで充分ですよ。とか言いつつ、新人賞の作品未満のものを読ませているわたしが言うのもあれですけどもね。
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