読書の記録

No.154 2006.5.4

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黒焦げ美人 /岩井志麻子

(文藝春秋 /平成14年発行)


 この人の文章は、純文学といっても十分通用するほど情緒豊かで、会話が少なく、じっくりと読ませる。会話ばかりで進む小説はどうしても読めなくてエンターテイメントと分類される人気作家のほとんどを楽しむことができないんだけど、彼女の作品は抵抗なくすっと入れるし、ぐんぐん引き込まれる。とてもうまい。

 妾になることで一家を養っている姉が家に火を放たれて殺されてしまう。その事件は、「黒焦げ美人」と新聞記者に名付けられ、有名になる。姉の男関係から犯人を探し出そうと妹につきまとう新聞記者。恋心を抱いていた男が容疑をかけられていると知って苦悩する妹。落ち着いた文章で、少しずつ紐解かれていく事件の全貌。

 一気に読んだ。だが、読み終わったとき、やはりこれは純文学ではなくエンターテイメントに分類されるのだなあと思った。というのも、物語の焦点の当て方が、人物ではなく、事件のほうに当たっていたからだ。人物の変化に期待して読むと、最初から最後まで内部的な変化や成長のない妹や、真犯人像がよくありそうな、それでいて現実感がないようなものだったりとか、少し不満が残るが、そういう読み方自体が間違っているんだろうと思う。



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