読書の記録

No.147 2006.4.10

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最後の息子 /吉田修一

(文藝春秋 /平成11年発行)


表題作「最後の息子」で第84回文学界新人賞受賞。おかまの閻魔ちゃんと暮らす主人公ぼく。閻魔ちゃんの母のような優しさに甘えて日々が過ぎていく。うまいんだけど、ちょっと届かない。大統領というあだ名の友人の死もイマイチ効いていない。物語において無駄死にをした感じがする。これが彼の作風なのだと言われてしまえばそれまでなのだろうけれど。うまいから読んでいる間は気持がいい。でも読み終わったあとにちょっと損した気分になる。ぼくと閻魔ちゃんの関係が、吉本ばななの「キッチン」とだぶった。
 二作目「破片」。長崎の方言を使い、二人兄弟とその父を描く。三人称なんだけど、何だかすごく不完全で読みにくい三人称だった。息子視点で書かれていたかと思ったら、急に「妻は」(息子にとっては母)と、父視点になる。
 三作目「Water」。高校生の水泳部の話。青春青春。
 やっぱりこの人の作品は、何かが欠けている。人間関係が不自然だ。欠けているということが現代という時代の反映なのかもしれないが、無自覚なのかわざとなのか、欠けっぱなしなのがわたしには気持悪い。わたしは古い人間なんだろうな、読者という点においては。他の人に、普通におすすめはできる作家ではあるけれども。



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