夫婦茶碗 /町田康
(新潮文庫 /平成13年発行)
ずっと気になっていて、読まなきゃ読まなきゃと思っていた町田康をようやく読んだ。おもしろーい!!ただの際物じゃないんだね!!(超失礼)
落語の噺家のような文章。次から次へと話題が出てきて、語呂やリズムがよく、思わず吹き出したりにやにやしてしまう。ストーリーというストーリーがあるわけではないんだけど、人間がちゃんと書けている。特に、駄目な人間なんだけど、どこか憎めない主人公は馬鹿キュート。いいなあ。こんだけ口と頭が回ったらいいなあ。 貧しいけれどどこか抜けていて悲壮感を感じさせない夫婦のキャラクターがとてもなごむ。世界観がメルヘンだ。
哀愁もある。哀愁を笑い飛ばすパワーもある。やり切れなさを表現に昇華させるストーリーがある。魅力的という言葉がふさわしい小説だった。
(抜粋)
さきほどから、ソファーに並んで腰掛けて、妻とわたしが壁に向かって、巌のようにおし黙っているのは、なにも夫婦揃って座禅修行をしているのではない、金が無いから黙っているのである。というのは、もしどちらかが口を切れば、当然、金のはなしになり、そうなれば左のごときの不毛な問答がなされるのが経験的に察知せらるるからである。というのは、
「おまえさん、いったいどうするつもりだい」
「どうするったってしょうがねんじゃねえか、まあ、なんとかならぁな」
「じゃあ、なんとかおしよ」
「なんとかおしよったって、おめえみてぇにそうのべつに、なんとかおしよ、なんとかおしよ、ってやられたんじゃ、まとまるかんげぇもまとまらねえじゃねえか」
「なにを言ってやがんだい、おまえさんの頭で考えたってどうなるもんかね、いい加減におしってんだよ、この西瓜野郎」
「おまえはすぐそうやって人を罵倒するだろう、そらぁ、罵倒してなんとかなるなら、罵倒してくださいよ。しかしね、いまは、世界の大勢と当家の現状に鑑みですね、この事態に立ち到った原因、経緯などを分析して、その事実に基づいてですね、非常の措置をもって時局の収拾をはからなきゃしょうがねぇじゃねえですか」
「なにが原因よ、なにが経緯よ、あなたが昼間から酒ばかり飲んで働かないからこんなことになるんじゃないよ、この唐変木或いは馬鹿」
(「夫婦茶碗」より)
他に中編「人間の屑」。この文庫の解説が筒井康隆なのが面白かった。
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