読書の記録

No.122 2005.10.21

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ニシノユキヒコの恋と冒険 /川上弘美

(新潮社 /2003年発行)


 ニシノユキヒコという飄々としたどこかつかみ所のない、(川上弘美の言葉で言えばとめどない)男の少年時代から死ぬまでの恋の物語。短編集。ニシノユキヒコと関わったり恋をしたりした女性(女の子も)たちが一人称でエピソードを語っていく。独特の文体、雰囲気は健在なのだけれど、「あたし」という一人称やセックスシーンの多さや軽いストーリーが、あれれらしくないなあと思って巻末を見ると小説新潮に連載したものだった。小説新潮は、少しエンターテイメント寄りの大衆文芸誌。ざっくり言って、直木賞系ね。

 まあ、らしくない、というのは失礼か。これこそが川上弘美と思う人もいるんだろう。面白いんだけど、他のわたしが好きな作品に比べると、主人公の「わたし」がとてもニセモノっぽくて、演じているという感じがして少しだけ物足りなかった。心の動きをメインテーマに小説を書いている人って、本当に何種類もの「わたし」を書けるものだろうか。

 でも面白かった。甘いけど、甘いだけじゃないお話。 


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