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SATORI/藤沢周 (河出書房新社 /1995年発行) 新人賞の選考委員などでよく名前を見かける作家なのに、まだ読んだことがなかったので読んでみた。あらびっくり。こういうものを書く方だったんですね! どういうものか説明しろってねえ。うーん、ハードボイルドジャンキースピーディー小説とでも名づけましょうか。勝手に。いい意味でとてもイッっちゃっている小説。でも文章がしっかりしている。リズム、語感、イメージの順番などが注意深く提示されているのが書き手の目からはよく分かる。だから、イッちゃってるのに世界にちゃんと入れるし読みやすい。表題作のSATORIという麻薬プログラムと同様、この本は別世界に飛ばしてくれる。 (抜粋) 頭皮への皮下注射ならお手のもんだ。 俺はガラス繊維のような針を人差指の先にのせる。頼りねえニードル、よれよれだ。酸化インジウム。俺は頭のてっぺんとこめかみにその電極針を慎重にセットした。安っぽいデバイスのモニターにはNGFを流し込んだ神経細胞の回路。二丁目あたりにいる、どでかいドブネズミの副腎髄質でこさえたんじゃないのか。オン。一瞬、舌の上に錆を舐めたような味が走る。四、五ボルトくらいの弱い電圧。こんなんでいけるのか。俺はゆっくりと半跏趺坐を決める。法界定印。数息観。 (「SATORI」冒頭より) from amazon SATORI(サトーリ) |