読書の記録

No.118 2005.9.30

←back 


となり町戦争/三崎亜紀

(集英社 /2005年発行)


 第17回小説すばる新人賞受賞作。
 二つの町が戦争をする。普通のサラリーマンであった主人公は、戦争相手のとなり町の調査任務を役所から言い渡される。戦争をしているというのに、主人公が思い浮かべるような「戦争らしい」動きはどこにもなく、役所から派遣された女性、香西さんを通してまるで何かの展覧会やイベントをこなすような淡々とした役所仕事でこなされる「戦争」が描かれる。
 設定が面白い。ちゃんと徹底して書かれている。ところどころ気になるところはあるけれど、主人公と香西さんがとても魅力的に書かれているので、物語として面白く読めた。人間がちゃんと書けていれば、出来事の矛盾なんて少々構わないと思ってしまうな。出来事は矛盾してないけど、人間が駒みたいな小説はつまらない。

 久しぶりに、日本人現代作家で好きな雰囲気の文章に出会ったな。いいね。これ、すばる文学賞の方でもいけただろうに。どっちがいいかは分からないけど。どっちもいけるならやっぱ小すばなのかしらね。なんのこっちゃ一般人には分かりませんね。集英社から出ている小説誌には二種類ありまして純文学専門の「すばる」と、大衆文学の「小説すばる」です。紛らわしいでしょ。芥川賞の候補になる系が「すばる」で後者は直木賞系。とざっくり説明したら分かりやすいかな。ちなみに、この「となり町戦争」は新人デビュー作にも関わらず、直木賞候補になったからすごいよね。えっと、さらにいらぬ補足をすると、芥川賞は主に新人に与えられる新人賞だから、デビュー作で受賞なんてのはよくあるわけだけど、直木賞は作家として一定の地位を気づいた人の作品に与えられることが多いのです。はい、閑話休題終わり。

 と、いうわけで、この本は純文学系好みの人におすすめ。村上春樹とか好きな人にもおすすめしたい。文章や描写が丁寧に書こうとしている感がいい。ストーリーや細かい設定とかは、やっぱり新人さんだからいろいろ突っ込みどころはあるんだけども、そういうのを目をつぶって読んであげたくなるくらいいいね、この人は。静かな悲しみを積もらせれる人だと思う。そしてきちんと文学出来る人だと思う。作家として好きだよ。今後の作品が楽しみ楽しみ。


from amazon
 

 ←back    menu