百年の孤独 /G・ガルシア=マルケス
(新潮社 /1972年発行)
この人の中篇をいくつか読んで気に入ったので、ついに長編に手を出してみた。
ガルシア=マルケスの魅力は、読みやすさだと思う。とても彼は話上手だ。めくるめくエピソードが苦もなく頭に入ってきて次から次へと読み進めてしまう。小難しい説明が頭を悩ますことはなく、五感で経験したかのように物語が体にしみこんでいく。
二人の夫婦がある地に居を構えて町を開発し子供たちが生まれ、それぞれ波乱に満ちた人生が始まり、またその子供たちが生まれ、という人生の最初から最後までが広がり萎んでいく様子を脈々と描き続ける。カメラはこの最初の夫婦の家に固定されたまま。時間軸に添ってばかりいるかといえばそうではなく、回想や血筋のルーツなどをさかのぼったり戻ってきたり、スポットをあてるべき中心人物を変えたり戻したり、注意深く読めば結構複雑なのだけど、それが自然に頭の中に入ってくる。洗練された昔話のようだった。子孫に同じ名前をつけたり、腹違いの子や娼婦に産ませた子や友人から引き取った子供など、出てくる人数が半端じゃないのにそれぞれの生い立ちや性格などが混乱しない。すごい。わたしはまだ、ある一人の人物の場面だけを切り取って描くのがせいいっぱいだ。こんなふうに脈々と一人の人生を語ってみたい。一人の人生を作ってみたい。
ガルシア=マルケスの物語は、非現実(呪術、予言、誇張、ユーモア、実際にはありえない物理現象、運命)と現実(戦争、血筋、人間、社会)が入り混じっていて、その混同の技術の巧みさゆえに、入り混じっている状態こそがリアルなんだと思わせられる。いや、思わせられるだけじゃない。入り混じっている状態こそがリアルなんだ。
一日で一気に読みきった。一日で百年を旅した。
訳:鼓 直
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