読書の記録

No.112 2005.6.29

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かげろう /ジル・ペロー

(早川書房 /2003年発行)


 二人の子供を連れ、パリに侵攻してくるナチスから逃げるため、爆撃をくぐり道を進んでいる若き婦人。彼女の前に、突如現れた奇妙な格好の少年。彼は子供の命を助け、婦人と一緒に行動し、驚くような機転と能力で彼らを助けていく。そのうち、婦人は少年に惹かれ……。
 原稿用紙にして150枚程度の中編。ストーリーの骨子を説明しても何のことはないという感じだが、場面の描写が生々しく差し迫っている。彼女という三人称を用いつつ、全て彼女から見た視点で描かれており、主人公の赤裸々な感情の変化もリアルで目が離せない。女であり母であり、戦争があり生活がある。生きる為の逃亡があり目の前で繰り広げられる隣人の死がある。主人公が母であるというだけで、戦争の描写はこんなにも恐くなる。
 彼女の少年への気持ちの変化が自然で、すんなりと入り込めた。

訳:菊地よしみ


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