かげろう /ジル・ペロー
(早川書房 /2003年発行)
二人の子供を連れ、パリに侵攻してくるナチスから逃げるため、爆撃をくぐり道を進んでいる若き婦人。彼女の前に、突如現れた奇妙な格好の少年。彼は子供の命を助け、婦人と一緒に行動し、驚くような機転と能力で彼らを助けていく。そのうち、婦人は少年に惹かれ……。
原稿用紙にして150枚程度の中編。ストーリーの骨子を説明しても何のことはないという感じだが、場面の描写が生々しく差し迫っている。彼女という三人称を用いつつ、全て彼女から見た視点で描かれており、主人公の赤裸々な感情の変化もリアルで目が離せない。女であり母であり、戦争があり生活がある。生きる為の逃亡があり目の前で繰り広げられる隣人の死がある。主人公が母であるというだけで、戦争の描写はこんなにも恐くなる。
彼女の少年への気持ちの変化が自然で、すんなりと入り込めた。
訳:菊地よしみ
from amazon
|