読書の記録

No.103 2005.5.21

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アイスリンク /ジャン=フィリップ・トゥーサン

(集英社 /1999年発行)


 この読書の記録でも何度か登場しているトゥーサン。今までに出した小説作品、「浴室」「カメラ」「ムッシュー」「ためらい」「テレビジョン」、そして最新作「愛し合う」は全て野崎歓訳+集英社発行で出版。現在も活躍中のベルギー出身作家だ。ついこの間、彼が来日した際に、わたしは講演会に行ってきたのです(自慢)。

 映画がもともと好きだった彼は、他の監督の手によって「浴室」が映画化されたのち、自らの手で自らの小説「カメラ」「ムッシュー」を映画化してきた。このアイスリンクは監督として第三作目の映画で、小説から生まれたのではなく最初から映画作品として生まれた点ではトゥーサン初の映画作品ということもできるし、彼自身も講演でそんな風に言ってた(自慢)。話は、アイスリンクを舞台に映画を作ろうというグループのどこか飄々として愛らしいどたばた喜劇。この本は、映画を撮り終えたあとに脚本を刊行してはどうかと勧められて書き下ろしたもの。脚本形式ではあるが、トゥーサンの味をそのまま楽しめる一冊。最後にあるトゥーサンによる自作解説もなかなか興味深かった。

 まあこの脚本を読んで講演を聞いたらもちろん映画のほうも見たくなるわけですが。ヤフーオークションで見っけてDVDゲットしました!! で、映画の方の感想ですが、やっぱり小説と映画は違うなあという感じでした。決して面白くないことはないんだけど、ギャグのところがばしっと決まってないというか、わたしのお気に入りの映画監督たちの作品と比較したら全然というか、まあそりゃ当たり前か。
 文章でくすりと笑わせるのと、映像でくすりと笑わせることが、全くの別物なのだと思った。もちろん力技で強引に大笑いに持っていくなら、文章だろうが映像だろうが内容が面白ければ面白いわけですが、飄々としてどこかユーモラスというレベルの笑いになると、タイミングと情景描写とリズムと引き(または余韻)が重要で、そのやり方は小説と映画では全然ちがう。それぞれのやり方をやらなくてはいけない。ううむ、難しいな。
 ところで、小説のユーモアならトゥーサン、そして映像のユーモアはカリウスマキが好き。カリウスマキの表情筋をぴくりともさせない役者たちが醸し出す妙な可笑しさ。あんなの小説でやりたい。小説でやるには小説のやり方を生み出さなくちゃ。 というわけで、映画監督もやってみたいとか当分言わなくなると思いまっす! 小説しかないのよ、わたしには。


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