読書の記録

No.100 2005.5.14

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予告された殺人の記録 /G・ガルシア=マルケス

(新潮社 /1983年発行)


 1982年度ノーベル文学賞受賞者。ラテンアメリカの作家。
 この物語は、サンティアゴ・ナサールという一人の男がどういうわけで殺されるに至ったかの物語である。記録というタイトルに相応しく、彼に関わりのある登場人物の証言を書きとめた刑事記録のような形で淡々と進められていく。サスペンスのような緊張感と人間の哀しさ醜さ意外さに目が離せない。そして淡々と綴っているだけなのにさまざまな人間像が全て生々しく迫ってくる。「記録」に徹することで、生々しさ、残酷さ、不条理さがよりくっきりと浮き彫りにされていたように思った。面白い。こんな小説があるのかと思った。でも、ちゃんとレビューできる能力が今のわたしにはないなあ。彼の作品をもっともっと読んでみたい。空前のベストセラーと紹介されていた「百年の孤独」(焼酎じゃないよ)をぜひ読んでみようと思う。


(抜粋:冒頭の文章)

 自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝、五時半に起きた。彼は、やわらかな雨が降るイゲロン樹の森を通り抜ける夢を見た。夢の中では束の間幸せを味わったものの、目が覚めたときは、身体中に鳥の糞を浴びた気がした。「あの子は、樹の夢ばかり見てました」と、彼の母親、ブラシダ・リネロは、二十七年後、あの忌まわしい月曜日のことをあれこれ想い出しながら、わたしに言った。「その前の週は、銀紙の飛行機にただひとり乗って、アーモンドの樹の間をすいすい飛ぶ夢を見たんですよ」彼女は、見た夢を必ず朝食の前に話すという条件で夢判断をし、それがよく当るので評判だった。しかし、自分の息子が見たこの二つの夢や、彼が死ぬ日の朝までに彼女に語った他の樹の夢については、何ひとつ不吉な前兆に気付かなかった。


訳:野谷文昭


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